概説

附帯決議が求めるロジックモデル評価への転換

2025年12月5日 医療法改正成立

「検討」から「実行」へ。
附帯決議が求めるロジックモデル評価への転換

改正医療法の成立に伴い、地域医療介護総合確保基金の運用ルールが根本から変わります。
自治体担当者・事業者が知っておくべき「評価の厳格化」とその対策について解説します。

重要

見逃せない「参議院 附帯決議」の重み

先般成立した改正医療法。条文そのものの変更に注目が集まりますが、実務者として決して見逃してはならないのが、同時に採択された「参議院厚生労働委員会 附帯決議」です。

※附帯決議とは
法案を可決する際に国会(委員会)から政府に対して行われる「要望」や「注文」のことです。法律の条文そのものではありませんが、行政運用に対して極めて強い影響力を持ちます。

特に第13項目に記された文言は、今後の「地域医療介護総合確保基金(以下、基金)」の運用ルールを根本から変える可能性を秘めています。

「検討」から「実行」へ。
決定的なフェーズの変化

過去の行政通知と今回の国会決議を比較すると、国が求める「本気度」の違いが浮き彫りになります。

医療法改正に伴う基金運用フェーズの変化

※なお、ロジックモデルの定義については、上図の通り「事業が目標とする成果を達成するに至るまでの論理的な関係を体系的に図式化したもの」とされています。

変化のポイントと根拠資料

現場への影響:事実上の「義務化」

もちろん、附帯決議に法的な拘束力はありません。しかし、行政には国会の意思を最大限尊重して運用する重い政治的責任が生じます。この意向は、実際の行政指導や予算査定の指針として反映されると考えられます。

具体的には、「ロジックモデルを用いて成果(アウトカム)を説明できない事業」は、次期計画での予算確保が困難になる時代が到来したと言えるでしょう。

評価の視点 従来の多くの事業報告 (アウトプット) これからの事業報告 (アウトカム)
報告内容の例 「研修を◯回開催した」
「参加者が◯人だった」
「参加者の行動がどう変わった」
「地域の課題がどう改善した」
予算への影響 予算の妥当性証明が弱く、
削減・見直しの対象になりやすい。
ロジックモデルによる説明が、
予算維持・獲得の強力な根拠となる。

これは限られた財源の有効活用(ワイズスペンディング)の観点からも不可避な流れです。

対策:求められる「ロジックモデル」への転換

この方針転換に対し、自治体担当者様および関連事業者様には、速やかに以下の準備に着手することが求められます。

🔍1. 既存事業の棚卸し

長年継続している事業について、「当初の目的は何か」「現状の課題解決に直結しているか」をゼロベースで見直すこと。

📊2. 指標の質的転換

「実施量(アウトプット)」から、「行動変容や地域課題の改善(アウトカム)」を問う指標へ切り替えること。

📝3. ロジックモデル構築

予算(インプット)がどのような活動を経て成果に繋がるのか。その論理的な道筋(ロジック)を可視化し、説明可能にすること。

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