概説

医療施設の適切な特徴把握が欠かせない時代へ

~医療機関の客観的な特徴が見えてくる病床機能報告データ~

入院医療の評価に用いられるデータ・セット

平成30年度の診療報酬改定に向けて、個別テーマ毎の議論が中央社会保険医療協議会の下部組織である診療報酬調査専門組織等で本格化してきています。診療報酬調査専門組織の一つである入院医療等の調査・評価分科会 *1)では、医療施設に対して入院医療等に関する調査を実施しており、その調査結果を議論の拠り所としています。分科会の成果物である診療報酬改定に向けた「とりまとめ(案)」で参照されるデータの多くは、「入院医療等の調査」由来のものとなりますが、平成30年度改定に向けた「中間とりまとめ(案)」では、「病床機能報告」由来のものがいくつか入ってきています。ここでは、医療政策に関わる様々な場で活用されるようになってきた病床機能報告データについて見ていきたいと思います。

ストラクチャー・プロセス指標が豊富な病床機能報告データ

病床機能報告データは、平成26年度の初年度分から順次公開され、平成28年度分の個票データの公開が現在進められています。平成27年度分については、平成29年3月の時点で全都道府県の個票データの公開が完了しており、病院が7,234施設、有床診が6,458施設となっています(Medysis調べ)。これは、一般病院7,417施設 *2)に対して約98%、有床診8,037施設 *2)に対して約80%となります。

平成27年度の個票データに含まれる医療施設毎のデータは、病床数、医療職数、医療機器数、患者数、手術件数、リハビリテーション件数等、約350項目、病棟別のデータは約100項目となります。平成28年度は、病棟別のデータに多くの項目が追加・拡充されて約300項目となり、項目数が大きく増えました。報告対象とする項目は毎年見直しが行われており、今後も追加・拡充が進められていくと想像されます。

医療機関が効率的な医療を提供するために

病床機能報告データによってどのようなものが見えてくるのかイメージを掴むために、医療機関の客観的特徴把握の一例として、退棟後の居場所について見てみたいと思います。

退棟後の居場所については、図表1のような形式で、(a)院内の他病棟へ転棟、(b)他の病院、診療所へ転院、(c)介護老人保健施設に入所、(d)介護老人福祉施設に入所、(e)社会福祉施設・有料老人ホーム等に入所、(f)家庭へ退院、(g)終了(死亡退院等)、(h)その他、に区分された患者数データが公開されています。図表2は、患者数を表現する手段として棒グラフ、構成比を表現する手段として折れ線グラフ、をそれぞれ用いて見える化したものですが、医療機関毎の特徴をより際立たせるために、(c)~(f)を自宅等、(g)~(h)をその他、と括って、(A)転棟、(B)転院、(C)自宅等、(D)その他、の4区分にしています。また、DPC対象病院の中で「一般病棟7対1入院基本料」を算定している病棟だけに絞り込んでいます。このような見える化によって医療機関毎の特徴を直感的に捉えることができるようになります(例えば、転棟が3割を超えるケース(N病院)、転院が2割近いケース(E病院)、自宅等が9割を超えるケース(P病院)等)。

「一般病棟7対1入院基本料」を算定している病棟は、ICU等の特殊な病棟を除けば、最も手厚い看護体制が敷かれている病棟であり、必然的に人件費等のコストが最も高くなる病棟でもあります。また、退棟後の居場所に関して医療機関毎の特徴が大きく異なっているということは、退棟時の患者像が医療機関毎に異なっている可能性が高いことを示唆しています。退棟後の居場所として自宅等が多くなる理由としては、(1)転棟先や転院先が確保できないため自宅等に戻れる状態に回復するまでコストが最も高い病棟で入院医療を続けている患者が多い、(2)回復の早い傷病であるため転棟・転院を介さず自宅等に戻ってもらっている患者が多い等、様々考えられます。ここで仮に、(1)の状況が慢性的に生じているのだとすると、医療資源の効率的な活用という視点からみれば、望ましい状態とは言い難いと言えます。

平成30年度の診療報酬改定に向けた「基本方針」に関する叩き台 *3)では、医療提供の『効率化』が一つのキーワードとなっています。従って今後は、自院の状況に加えて、他院の状況、更には地域の状況を客観的に把握した上で、自院の病棟マネジメントや他施設との連携等を包括的に捉えた、更なる効率化施策の検討が必要になってくると思われます。


図表1:「入棟前の場所」、「退棟先の場所」に関する医療機関の個票データ

beforeafterresidence-table


図表2:入退棟前後の居場所(一般病棟7対1入院基本料算定病棟)

afterresidence-ratio

参考資料

  1. 中央社会保険医療協議会 入院医療等の調査・評価分科会」(厚生労働省)
  2. 医療施設動態調査(平成27年6月末概数)」(厚生労働省)
  3. 次期診療報酬改定の基本方針の検討について(第106回社会保障審議会医療保険部会)」(厚生労働省)

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